扉絵の間 扉絵及び堂内彩色復元
鳳凰堂内四方の壁扉には、九品来迎図(くほんらいこうず)が山水風景画を背景に描かれており、平安時代やまと絵の最高峰として特に高名です。ミュージアム鳳翔館「扉絵の間」では、この中から4枚の扉絵とその縁、また長押や柱などの堂内彩色を復元模写し、原寸で印刷したものを陳列して、創建当時の鳳凰堂内さながらに展示しています。
昭和の中頃、国宝鳳凰堂は戦後の急速な発展に伴う大気汚染等の環境悪化による影響から、扉の別置保存が検討されました。
このため、昭和42(1967)~46(1971)年にかけて、松本道夫(まつもとみちお)・川面稜一(かわもりょういち)・日下八光(くさかはっこう)各氏により復元的な模写が行われました。この際には、江戸時代の田中訥言(たなかとつげん)や、土佐派の手になる模写、戦前戦後の秋山光和(あきやまてるかず)・山崎一雄(やまざきかずお)両氏の研究が参考とされました。
この昭和40年代の復元模写は、制作されてから数年を経て8×10のポジフィルムで分割撮影されました。しかしその時すでに、模写作品には変色や剥落などの劣化が出ていました。
この度の「扉絵の間」建設にあたって計画された復元事業では、昭和40年代の復元模写のポジフィルムをデジタル処理することから始まりました。まずデジタル上でフィルムの損傷や変色を除去し、紙に印刷して全体の様子を確認しました。そしてその上から、日本画家の手で彩色を行い、絵具の質感や厚みなどを表現、それを再びデジタルで高精細撮影しました。
現在、「扉絵の間」で陳列された扉絵は、こうした重層的な手法で作られたデジタルデータを印刷したものです。
一方、長押や柱などの堂内彩色は、最新の写真技術と、伝統的な絵画法との融合により完成しました。