藤はなの窓
Column

2020.1.1
令和2年

多産の象徴とされるねずみですが、干支のはじめの子(ね)は、元々小さい子どもを意味し、
子どもの髪が伸びることを表していました。

「子」は、生長と様々な変化を暗示しています。
仏教では、子年は千手観音を守り本尊とします。
様々な形の手でしかも変化(へんげ)しながら、たとえ自身の手が傷付くことがあっても差しのべ続ける無限の慈悲の存在です。
菩薩は、苦しむ人のため、覚りの世界から離れ、苦しみの世界に留まる方です。

十干の庚(かのえ)は、堅い鉱石のようなもので、変化の直前の状態を意味します。
鉱石から様々な鋼や斧、鋏などが作り出されるのです。
私達は、芯の通った柔軟さをあわせ持つことができます。
変化を恐れてはいけません。

平等院には、円山應挙とその実息である木下應受筆の『十二支図』が伝来されていますが、その巻頭には、白黒二匹の「子」が画かれています。

スクリーンショット 2020-01-01 9.11.15.JPG

白鼠は、滅多に顕れない珍重なものとして、朝廷にも献上されてい
ます。
日常的に顕れる鼠と、珍しい白鼠が同じ空間で共に遊び生長する図です。
特別なものばかりを追い求める必要はありません。異なる二匹がいずれ、それとは全く別の多くのいのち(=機会)を産み出すのです。

令和になり、はじめて年越しを経た年初。

他者とともに変化する日常を作りあげる確信を持ちたいものです。

(文:神居 文彰)

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